フィナンシャルグループならではの
セキュリティ構築を目指す開拓者たち

中森 正樹(写真右)
きらぼしシステム インフラサービス部長
小瀧 直哉(写真左)
株式会社アイティーシー 取締役
経営企画推進室 室長 兼 技術統括営業本部 本部長

トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 中森 正樹/小瀧 直哉
強化された技術力で、
誰もやっていないサービスを創る

2023年10月、東京きらぼしフィナンシャルグループの一員に、新たなシステム会社が加わった。SES(システム・エンジニアリング・サービス)やシステム開発などを総合的に手掛ける技術集団、アイティーシーだ。これまでグループ内でシステム開発を担ってきたきらぼしシステムの技術にアイティーシーの専門性が加わり、グループとしての技術力が大きく強化されることになる。デジタル分野に対するグループの“本気度”が表れた、一つの転換点とも言えるだろう。

そして2024年春、きらぼしシステム、アイティーシー、きらぼしコンサルティングがタッグを組み、3社のシナジーを活かした顧客サービスを検討するプロジェクトが始まった。その中心メンバーの一員となっているのが、今回登場するきらぼしシステムの中森正樹(なかもり・まさき)と、アイティーシーの小瀧直哉(こたき・なおや)である。

2002年に経済学部を卒業した中森は、「これからはITの時代だ」ときらぼしシステムに入社。プログラミングをゼロから学び、新しいテクノロジーや未開拓の分野にも積極的に挑戦した。そのうちにインフラ関連の部署に配属され、「がむしゃらにやってきて、気づいたら部長になっていた」という。現在は管理職を務めるほか、ゼロトラスト・セキュリティと呼ばれる最新のアプローチでイントラの構築などを担当している。

トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 中森 正樹/小瀧 直哉-02

一方の小瀧もまた、強い挑戦心と起業家精神の持ち主だ。高校生の頃から兄弟たちと「いつか自分たちで起業しよう、その時は自分がITを担当する」と夢を抱き、アイティーシーでは技術者としてITインフラのベーシックな分野を一通り経験。大企業の主要案件を担当するほか、タイで異文化にもまれて事業を開拓したり、取締役として経営や人材育成に注力したりと、アグレッシブに新たなステージを追いかけている。

「誰もやっていないことをやるのが好き」(中森)
「人と同じことがすごくイヤで、つねに人と違うことをしたい」(小瀧)

仕事観を聞けば、口を揃えて同じ答えが返ってくる。共通するこの開拓者マインドが、自然と両者をプロジェクトへ導いた。初めて会った会食の場で、二人は自分たちが同じビジョンを持っているとすぐにわかったという。共通項となったのは、その時話題に上がった「セキュリティビジネス」だ。

金融セキュリティが守るべきは、
現金だけじゃない「デジタル資産」

「日々の業務にあたる中で、『世の中がこれだけデジタル化されているのだから、セキュリティをもっとちゃんと考えないとだめなのでは』というシンプルな課題感がありました。家には鍵をかけるのが当然なのに、デジタルは鍵をかけなくていいんですか、と。そのことをグループが抱える約5万社のお客さまに訴求するだけでも意義があると思っていたところに、アイティーシーさんがグループイン。聞けば7年ほど前からセキュリティ関連事業に取り組んでいると言うので、『じゃあ一緒にやっていこう』となったのです」(中森)

「銀行における資産というと、これは私の勝手なイメージかもしれませんが、やはり現金資産を考えますよね。でも個人の情報や取引情報がこれだけデジタル化されている今、現金だけでなく『デジタル資産』という広い視点から資産を捉えなければならない。フィナンシャルグループに入ったことで、“現金資産に限らないデジタル資産”を守ることの意義を私も強く意識するようになりました。さらに言えば、ただ守るだけでなく、デジタル資産を活かして将来の利益につながるような後押しもできればいいなと考えています」(小瀧)

トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 中森 正樹/小瀧 直哉-03

企業がランサムウェア(身代金要求ウィルス)やサイバー攻撃の被害を受けたというニュースが、もはやめずらしくはない現代。セキュリティの重要性を問われ、軽視する人は稀だろう。しかし、大企業ならば予算を割いて対策を行えるが、中小企業ではまだそこまでの危機意識を持っていなかったり、持っていても予算やリソースの都合で対策ができなかったりというケースが多い。そうした中小企業に対し、いかに高いレベルのセキュリティを、負担なく提供することができるか——。これから具体的なサービスをかたちづくっていくにあたり、まずはそこが大きな肝になる。

加えて重要なのは、ただシステムをつくって売るだけでなく、いかに顧客に寄り添えるかというアプローチの仕方だ。

「おそらく中小企業には、(セキュリティ対策について)『大丈夫?』と声をかけてくれる人がいません。だから我々からお客さまに率先して声をかけ、アクティブにデジタル資産を守っていくことが必要だろうと考えています。ちょうど私たちが健康診断を受けるのと似ているのですが、定期的に『セキュリティは大丈夫ですか?』とお声がけしてセキュリティ診断を行い、その結果から対応策を考えていく、そんなフローをつくれたら意義があると思います」(小瀧)

「そうなれば、きらぼしコンサルティングの持つコンサル力とのシナジーもより発揮されます。将来的には保険商品もあわせてご提案できたら、お客さまへの提供価値がより高まりますね。フィナンシャルグループとして総合的にパッケージ化し、お客さまのセキュリティを支えていきたいです」(中森)

目の前の課題に答えを出すのが、
技術者の役目
トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 中森 正樹/小瀧 直哉-04

まだプロジェクトが始動したばかりにもかかわらず、二人の口からは検討すべきサービスの目的やビジョンが明確に次々と語られる。それはやはり、常に“他にはないこと”にチャレンジしてきた人ならではの、見通す力があるからだろう。

しかし二人が何より重視しているのは、このプロジェクトをそうした構想だけで終わらせず、“どう具現化するか”という実の部分だ。先を見通しつつ、目の前の課題に技術でしっかり答えを出す。ここに、技術者としての二人のプライドがある。

「例えば今回のセキュリティでも、大丈夫ですかと声をかけ、もし大丈夫じゃなかったとき、必要とされる技術やサービスを我々がきちんと持っていなければ意味がありません。今私たちに求められていることは、その技術やサービスをきちんと用意することなんだと理解しています」と話す小瀧。“技術者集団”であるアイティーシーの一員として、「技術を高めてこそお客さまに寄与できる」という揺るぎない考えを持っている。

その考えに中森も頷きつつ、「でも、重いなぁ」と笑って本音を漏らす。これまで新たな事業を開拓してきた経験があるがゆえ、そして失敗も踏んだ苦い経験もあるがゆえに、乗り越えるべきハードルの高さと困難さがわかってしまうのだ。しかしその“重さ”は決してネガティブなものでなく、開拓者マインドを持つ彼らの大きな原動力になっている。

「例えば今みなさんがWordやExcelを使うのと同じレベルでセキュリティシステムを使いこなせるようになるには、リテラシーとスキルの両面から考えても非常に時間がかかります。デジタル・セキュリティが中小企業にとってもっと当たり前のものになるには、まだまだ長い道のり。だからこそ、いかにお客さまに寄り添い、技術と知識、そしてサポートを提供できるかが重要になるのです。とてもやりがいのあるプロジェクトですね」(中森)

新しいことを楽しめたら、
未来は拓ける
トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 中森 正樹/小瀧 直哉-05

技術者だからこそわかること・見えること。本人たちには懸念も不安もあるだろうが、聞いている側としてはむしろ安心感を覚える。彼らの地に足の着いた現実的視点と技術、そして何よりその責任感が、きっと東京の未来を変えていくだろう。

「技術者としては、常に『自分たちの技術をどう発揮すれば、みんなが幸せになるだろう?』という発想をするので、『トーキョーに、つくそう。』というフレーズは正直なところ身にそぐわないと思ったりもします。でも、自分が優れた技術を提供することでお客さまが喜んでくれたら、それが結果的に『つくそう』なのかもしれませんね」(中森)

「デジタルの世界に地理的境界はありませんから、日本を、世界を目指して技術を高めていきたいです。東京の問題に限らず、社会課題に向かって自分たちがどうアプローチできるか。そこにはやはり、使命感を持っていますから」(小瀧)

仕事のポリシーは「楽しく働くこと」だと、これもまた二人そろって同じ答えが返ってきた。そのマインドを原動力に、新しいフィナンシャル・セキュリティ創出への模索は続く。