百戦錬磨の傾聴力と貢献心
橋本 斉
シニアコンサルタント
SDGsの前進に寄与する
SDGsはトレンドを超え、すでに私たちの暮らしや生き方を見直すキーワードとして定着した。貧困、不平等、格差、気候変動……これらは地球全体の課題であり、人々や企業が真剣に解決するべきだという共通認識のもと、世界は団結しようとしている。
きらぼしコンサルティングは、企業がSDGsを取り組むにあたって優先課題を可視化するサポートのため、2022年3月から「きらぼしSDGs評価プログラム」の提供を開始した。シニアコンサルタントの橋本斉(はしもと・つよし)は、このプログラムの導入サポートを担うメンバーの一人だ。
「きらぼしグループとお取り引きのある法人さま向けに提供しているこのプログラムでは、客観的な結果をもとに自社の強み・弱みが把握できるため、SDGsの取り組み推進や強化に繋がります」
プログラムは、いわゆる経営分析ツールだ。3つのステップで自社の状況を明らかにする。一つ目はSDGs達成に関連する 5 分野 37 の設問に基づくインタビュー、二つ目はインタビューを踏まえたSDGsの取り組み状況のフィードバック、三つ目は対外的なPRに活用いただける『SDGs宣言書』の策定だ。橋本は、この3つのステップに伴走する。
なかでもカーボンニュートラルは、持続可能な発展の根源を支える自然資本に関わる究極の課題だ。現在、日本の大企業のほとんどは、自ら再生エネルギーの積極活用や脱炭素化の取り組みに本腰を入れており、サプライチェーン全体でもカーボンニュートラルの取り組みを推進する方向に舵を切っている。
しかし、エネルギーをはじめとする自然資本をベースに事業を成長させてきた多くの企業にとって、カーボンニュートラルは容易く乗り越えられる壁ではない。具体的にどのような取り組みをするべきなのか、何から始めたらよいのか頭を悩ませている企業は少なくない。
「SDGsには様々な目標が含まれますが、なかでも人権と環境は企業が取り組むべき喫緊の課題です。とくに社会的責任として大きいのは、カーボンニュートラルの実現です。きらぼしコンサルティングの強みは、グループ間で連携し、企業を支援できること。例えば、きらぼし銀行は、2022年7月にカーボンニュートラルに取り組む企業を対象に融資の利率を優遇する制度をスタートしました。SDGs評価プログラムの提供にとどまらず、グループ全体でカーボンニュートラルを支援する体制が整っています」
経営者の右腕でありたい
企業はビジネスとSDGsの両立を真剣に考えなければならない時代に突入した。これまでに経験したことがない事態に直面する企業にとって、橋本は心強いパートナーだ。
実のところ、橋本は2020年入社のオールドルーキー。いや、経歴からすればルーキーと呼ぶのは、ふさわしくないだろう。
工学系の大学院を卒業後、電気機器メーカーに就職。技術者として電気機器の設計や開発の経験を積み、新規事業企画、経営企画、M&A担当など経営戦略に関わる大きな仕事を託されてきた。約32年勤めあげたのち、仕事で関わりのあったきらぼしコンサルティングの前会長から声がかかり、未経験の分野への転職を果たした。
「きらぼしコンサルティングに入社した当時、SDGsは黎明期で、ビジネスと紐づけて考えるムードは今にくらべると希薄でした。しかし、今後は必ず企業の成長とSDGsの取り組みは無縁ではいられなくなるという予想のもと、窓口が必要だからという理由で、私に担当を務めてほしいと依頼されました」
前職で直接的にSDGs関連の仕事をしたわけではなかったが、機器の開発や製造における環境規制などの知見や、経営に近い仕事をしていた経験を買われた形だ。
橋本の経験はフィールドを変えても早々に花開いている。プログラムの導入支援だけではなく、カーボンニュートラルを事業計画に落とし込む段階で、企業にアドバイスするケースも増えはじめた。
現在の仕事で求められているのは、コンサルタントとしての現状分析、人と人を繋ぐコミュニケーション力、企業との信頼関係を構築できるヒューマンスキル。共通することは、「相手の話をちゃんと聞くこと」だと橋本は言う。
「私は経営者の右腕である『経営企画部』のような存在でありたいという思いがあります。言われたことをやる御用聞きではなく、ときに問いかけたり、じっくり耳を傾けたりしながら、密度の高い対話をする。どのようなコツがあるか?なかなか言語化することが難しいのですが、私が前職で5年間、経営者のそばで経営戦略を手掛けた経験が、コミュニケーションの細部に生きているのだと思います」
持ち前の継続力で社会貢献を
橋本を知る若手社員は、橋本のことを「本質を掴もうとする人。でも、とても話しやすくて明るい」と話す。
重厚かつエグゼクティブなキャリアを持つにもかかわらず、まとう雰囲気が柔和なのは、もう一つの顔があるからかもしれない。
かれこれ20年以上、子どもが小学生のとき所属していたサッカー少年団で“週末監督”をしている。「子どもはとっくに卒団しましたけど、私はなんだかんだ続けています」と笑う。
現在は約70人の小学生を指導。過去には、プロに進んだ教え子もいる。いまは若手のコーチに指導を委ね、自分は少年団の運営を担当しているという。
「大人にくらべると子どもは正直なので、つまらないときはつまらないと言葉にしますし、態度にも出ます。だからこそ、余計にどうしないといけないか考えます」
以前は熱血派監督だったというが、子どもの様子から楽しむことの大切さを学び、楽しさを感じられる指導に変えた。
「サッカーを辞めるときって3パターンなんです。サッカーがつまらなくなったか、自分の限界を感じるか、怪我か。個々のモチベーションって、何が起点になるか分かりませんが、何か見つかれば、その子は自然と頑張るものだと、監督になってから実感しました。たぶん仕事も同じだと思うんですよね。仕事なので楽しいだけでは勤まりませんが、働き過ぎなんじゃないかなと思ったら声を掛けるようにします。練習のしすぎは怪我のもと、です」
周囲の人の心に耳を傾け、自身の考え方を柔軟に変えることをいとわない。一方で、続けることも大切にしている。日々の仕事での気づきを丁寧に記録することもその一つだが、他にも続けている意外な日課が「歌詠み」だ。
「同じことを10年間続けたら、一つの道に秀でることになる。それが他の道にもつながる」という信念を持ち、中学時代に担任の国語教師から教わった「歌詠み」の心得を思い返して、毎日歌を詠み続けているという。
四季と草花をモチーフにした歌を好んでいる。SNSには、紫陽花の写真と「梅雨空に色とりどりの自己主張」、木々の写真と「強風に煽られしなる枝葉にぞ息吹を感じ 生命を眺めん」などが並ぶ。どことなく人間の本質に重なる歌が多いのは気のせいだろうか。
「歌のセンスはまったくないんですけど、なんだかんだ10年以上続いています」と照れ笑いをみせる。
変わらないこと、変えること。その2つの大切さを熟知し、自ら体現している橋本。子どもも成人し、少年団も次世代に継承しはじめた今、モチベーションは社会貢献に軸足を移しはじめている。最後にこんな思いを語った。
「東京は日本の行く末を左右するほどの都市。その東京を支える企業が元気にならなかったら、日本も元気になりません。企業が直面している環境や人権などの課題解決に、30年で培った経験を生かせる。こんなに嬉しいことはないです。これからは、自分がもらったものを、社会にどう返すかを考えていきたいですね」